大切な野菜や花を食い荒らす蛞蝓。しかし、化学合成された農薬を使うことには抵抗がある。小さな子供やペットが庭で遊ぶから、できるだけ安全な方法で対策をしたい。そう考える自然派のガーデナーは少なくありません。幸いなことに、私たちの身近にある、安全な素材を活用した、昔ながらの知恵とも言える害虫対策が数多く存在します。まず、最も有名で、効果も高いのが「ビールトラップ」です。蛞蝓は、ビールや発泡酒に含まれる酵母の匂いに強く誘引される習性があります。空き缶や、ヨーグルトの空き容器などの浅い容器に、ビールを1~2センチほど注ぎ、蛞蝓が出没しそうな場所に、容器の縁が地面と同じ高さになるように少し埋めて設置します。匂いに誘われてやってきた蛞蝓は、面白いように容器の中に落ち、中で溺れてしまいます。次に、蛞蝓が嫌う「バリア」を作る方法です。コーヒーを淹れた後の「コーヒーかす」を、守りたい植物の周りにぐるりと撒いておくと、カフェインの成分と、ザラザラとした感触を蛞蝓が嫌い、寄り付きにくくなります。また、「卵の殻」を細かく砕いて撒くのも、その鋭利なエッジが彼らの柔らかな体を傷つけるため、同様の忌避効果が期待できます。さらに、蛞蝓は「銅」に触れると、微弱な電流を感じて嫌がる性質があります。銅線や、市販されている銅製のテープを、植木鉢やプランターの周りに巻きつけておくと、物理的なバリアとして機能します。そして、最もやってはいけないのが、安易に「塩」を撒くことです。確かに蛞蝓は塩をかけると脱水症状で死にますが、土壌に塩分が蓄積し、植物の生育を阻害する「塩害」を引き起こす原因となります。環境への影響を考え、塩の使用は避けるのが賢明です。これらの自然な対策と、そもそも蛞蝓が棲みにくい、風通しの良い乾燥した環境づくりを組み合わせることが、持続可能で、安全なガーデニングを実現するための鍵となるのです。