私が、天井裏からの不審な物音に気づき始めたのは、秋が深まる頃でした。最初は、夜中に「カタカタ…」と、何かが動くような小さな音。しかし、その音は日に日に大きくなり、やがて「トトトト…」という、明らかに何かが走り回る音へと変わっていきました。そして、決定的な出来事が起こったのです。ある朝、キッチンで、米袋の隅が鋭くかじられ、中のお米が床に散らばっているのを発見しました。そして、そのすぐそばに、数粒の黒いフンが。ねずみだ。私は確信しました。その日から、私の平穏な日常は一変しました。夜、ベッドに入ると、天井裏の運動会が気になって眠れない。キッチンに立つたびに、どこからか視線を感じるような気がして、落ち着かない。私は、藁にもすがる思いで、市販の粘着シートや超音波装置を買い込み、自分で駆除を試みました。しかし、賢い彼らは、私の仕掛けた罠をあざ笑うかのように、被害を拡大させていきました。パンの袋がかじられ、しまいには、仏壇にお供えしていたお餅まで、無残な姿になっていました。精神的に追い詰められていたある夜、ついに、リビングでテレビを見ている私の目の前を、一匹のねずみが横切ったのです。その瞬間、私の心は完全に折れました。もう、これは私一人の手に負える問題ではない。家が、乗っ取られてしまう。私は震える手でスマートフォンを握りしめ、インターネットで検索した、地元のねずみ駆-除業者に、助けを求める電話をかけたのです。数日後、調査に来てくれたプロの担当者は、天井裏を覗き込み、壁のラットサインを指差し、「クマネズミですね。完全に巣を作って、子供も生まれていますよ」と、冷静に、しかし断言しました。その言葉に、私は不思議な安堵感を覚えました。ようやく、この長い戦いの終わりが見えた、と。後日、専門的な駆除と侵入経路の封鎖作業が行われ、あれほど毎晩のように私を悩ませていた物音は、嘘のようにぴたりと止みました。費用はかかりましたが、それと引き換えに手に入れた「安心して眠れる夜」は、何物にも代えがたいものでした。
私がねずみ駆除業者に助けを求めた日