気づけば庭のアジサイの葉の上に、あるいは玄関のたたきに、ぬらりとした跡を残しているなめくじ。一体彼らはどこから、どのようにして私たちの生活圏内にやって来るのでしょうか。その発生源と侵入経路を理解することは、物理的に彼らをシャットアウトするための重要な知識となります。まず、なめくじの主な発生源は、屋外の環境そのものです。彼らは、庭の土の中や、落ち葉や枯れ草が堆積した場所、石や物陰の下といった、湿気が多くて暗い場所に卵を産み付けます。卵は真珠のような光沢のある小さな球形で、一度に数十個が塊で産み付けられます。条件が良ければ、数週間で孵化し、小さななめくじが誕生します。つまり、家の周りに雑草が生い茂っていたり、落ち葉が掃除されずに放置されていたりする場所は、彼らにとって格好の繁殖拠点となっているのです。そこから、夜な夜な餌を求めて活動範囲を広げ、庭の植物や、時には家の中へと侵入してきます。家の中への侵入経路は、私たちが想像する以上に多様です。なめくじは殻を持たない柔軟な体をしているため、ほんの数ミリの隙間さえあれば、簡単に入り込むことができます。例えば、網戸のフレームと窓枠の隙間、サッシの水抜き穴、ドアの下の隙間、換気扇や通気口、そしてエアコンの配管を通すために壁に開けた穴の周りの隙間などが、主な侵入ルートとなります。また、私たちが意図せず「持ち込んで」しまうケースも少なくありません。購入した花の苗や野菜の苗の土の中に、卵や小さな個体が潜んでいることがあります。あるいは、収穫した野菜の葉の裏に付着していることに気づかず、家の中に持ち込んでしまうこともあります。家の中に侵入する目的は、やはり「湿気」と「餌」です。特に、浴室やキッチンといった水回りは、彼らにとって魅力的な環境です。なめくじは遠くから引っ越してくるのではなく、家のすぐそばで生まれ、わずかな隙間を見つけては静かに侵入してくる隣人なのです。