家の中で見かける蜘蛛のほとんどは、臆病で、人間に対して無害な存在です。しかし、日本にも、私たちの健康に深刻な被害を及ぼす可能性のある、いくつかの「毒蜘蛛」が生息しているという事実を、私たちは決して忘れてはなりません。過度に怖がる必要はありませんが、正しい知識を身につけ、万が一遭遇してしまった場合に、冷静かつ適切に対処できるようにしておくことは、自らの身を守る上で非常に重要です。最も有名で、警戒すべき毒蜘蛛が、特定外来生物にも指定されている「セアカゴケグモ」です。元々はオーストラリアなどに生息していましたが、今や日本各地でその生息が確認されています。メスは体長1センチ程度の丸い体で、全体が黒く、背中に特徴的な赤い砂時計のような模様があるのが最大の特徴です。オスは無害ですが、毒を持つのはメスだけで、その神経毒は非常に強力です。主に、屋外の側溝の蓋の裏や、公園のベンチの裏、エアコンの室外機の陰など、日当たりの良い、暖かくて乾燥した場所に巣を作ります。家の中に侵入してくることは稀ですが、庭仕事の際などに、うっかり巣を触ってしまい、咬まれる被害が報告されています。咬まれると、激しい痛みが広がり、重症化すると、発熱や吐き気、筋肉の麻痺などを引き起こすこともあります。次に、在来種で注意が必要なのが、「カバキコマチグモ」です。体長は1.5センチ程度で、黄緑色から淡い褐色の体をしています。主にススキなどのイネ科の植物の葉を巻いて巣を作りますが、夜間に活動し、家に迷い込んでくることがあります。咬まれると、セアカゴケグモほどではありませんが、非常に激しい痛みが数日間続くことがあります。もし、これらの特徴に当てはまる蜘蛛を見つけたり、あるいは咬まれてしまったりした場合は、絶対に素手で触らず、可能であれば、殺虫剤などで駆除し、その死骸を保管した上で、速やかに皮膚科などの医療機関を受診してください。医師が、どの蜘蛛に咬まれたかを判断する上で、その死骸が重要な手がかりとなります。
その蜘蛛、本当に安全?日本にいる危険な毒蜘蛛