丹精込めて育てた花の新芽が、一夜にして消え去っている。大切に育てていた多肉植物の葉に、不規則な食害の跡が残っている。ガーデニング愛好家にとって、これほどがっかりすることはありません。その静かなる食害の犯人の多くは、夜の闇に紛れて活動する「蛞蝓」です。彼らから、美しく繊細な植物たちを守り抜くためには、ガーデナーならではの、特別な防衛術が必要となります。まず、敵の「好み」を知ること。蛞蝓は、柔らかくて水分を多く含む植物を特に好みます。例えば、植えたばかりの苗や、みずみずしい新芽、そしてパンジーやペチュニア、マリーゴールドといった草花の花びらは、彼らにとって最高のごちそうです。また、レタスやキャベツ、白菜といった葉物野菜も、大好物です。これらの植物を育てている場合は、特に厳重な警戒が必要となります。次に、被害の「サイン」を見逃さないことです。蛞蝓が這った後には、キラキラと光る粘液の跡が残ります。朝、庭に出て、このサインを見つけたら、その周辺に犯人が潜んでいる証拠です。昼間は、食害にあった植物の株元や、近くにある植木鉢の裏、石の下などを探してみてください。そこに、彼らの隠れ家があるはずです。具体的な防衛術としては、まず、鉢植えの場合は、鉢の縁に「銅テープ」を巻きつけるのが非常に効果的です。蛞蝓は銅に触れるのを嫌うため、物理的に鉢への侵入を防ぐことができます。また、鉢底の穴から侵入するのを防ぐため、鉢底ネットを敷くのも忘れないようにしましょう。地植えの場合は、植物の株元を、コーヒーかすや、卵の殻を細かく砕いたもので囲い、バリアを作るのが有効です。そして、最も重要なのが、庭全体の「環境整備」です。枯れ葉や雑草をこまめに取り除き、植木鉢を地面から少し浮かせて置くなどして、庭全体の風通しを良くし、ジメジメした場所をなくすこと。それが、蛞蝓にとって魅力のない、住みにくい環境を作り、あなたの美しい庭を守るための、最も根本的な対策となるのです。