たくさんの脚を持ち、素早く動くという共通点から、ゲジゲ-ジとムカデはしばしば混同されがちです。しかし、この二者は、見た目だけでなく、その生態や人間に対する危険性において、全く異なる存在です。その違いを正しく理解することは、万が一遭遇した際に、適切な対処をするために非常に重要です。まず、見た目の違いです。最も分かりやすいのは、脚の長さと数です。「ゲジゲジ」は、非常に細くて長い脚が、胴体の幅よりも外側へ大きく広がっており、一対の脚が他の脚より長いのが特徴です。そのため、全体的にフワフワとした、クモのような印象を与えます。一方、「ムカデ」は、ゲジゲジに比べて脚が短く、胴体の真下から生えています。脚の数も、ムカデの方がはるかに多く、胴体の節一つひとつから一対ずつ脚が生えているように見えます。体型も、ゲジゲジが平たく楕円形なのに-対し、ムカデはより細長く、扁平な形状をしています。そして、最も決定的な違いが、その「危険性」です。結論から言うと、危険なのは圧倒的に「ムカデ」です。ゲジゲジは、臆病な性格で、人を咬んだり刺したりすることはなく、毒も持っていません。不快な見た目とは裏腹に、人間に対しては無害な存在です。それどころか、ゴキブリなどの害虫を捕食してくれる益虫としての一面さえあります。一方、ムカデは、強力な毒を持つ顎で、動くものに積極的に咬みついてくる、非常に攻撃的な生き物です。ムカデに咬まれると、アナフィラキシーショックを引き起こすこともある、激しい痛みと腫れに襲われます。つまり、たくさんの脚を持つ虫に遭遇した時、それが「脚が長くて、フワフワしている」ならゲジゲジ、「脚が短くて、ウネウネしている」ならムカデ、と見分けることができます。そして、もしそれがムカデであった場合は、絶対に素手で触ろうとせず、最大限の警戒をもって対処する必要があるのです。