数年前、川のせせらぎが聞こえる静かな住宅地に念願のマイホームを建てました。環境の良さに満足していたのも束の間、最初の春に私たちは衝撃的な光景を目の当たりにしました。それが、地域住民も恐れるユスリカ大量発生の洗礼でした。夕方になると、ベランダの向こう側に巨大な煙のような影がいくつも立ち、それが風に流されて家の外壁に吸い寄せられてくるのです。窓を閉め切っていても、どこからか入り込んだ小さな影が照明の周りを飛び回り、翌朝には窓のサッシに灰のような死骸が数ミリの厚さで積もっていました。ユスリカ大量発生の最も恐ろしいところは、一匹一匹は何の害もない弱い虫なのに、その「数」が精神を削ってくることです。朝起きてカーテンを開けた瞬間、ガラス越しに数千匹の虫が蠢いているのを見るのは、言葉にできない不快感がありました。洗濯物は外に干せず、換気のために窓を開けることも躊躇われ、まるで虫に包囲されたような生活を強いられました。業を煮やして殺虫剤を撒いてみましたが、霧雨のように降ってくる次なる群れの前では無力に等しく、虚しさが募るばかりでした。私たちはこのユスリカ大量発生という現実を受け入れ、戦うのではなく「防衛」に徹することに決めました。まず、すべての網戸を通常より細かい目に取り替え、窓の隙間には気密テープを貼りました。さらに、カーテンは遮光性の高いものを選び、夜間に光が外へ漏れないように細心の注意を払いました。外灯も虫が集まりにくいとされる電球色のLEDに変更し、庭にはユスリカが嫌うと言われるハーブを植えました。こうした対策を積み重ねるうちに、家の中に侵入してくる個体は劇的に減り、ようやく心安まる時間を過ごせるようになりました。ユスリカ大量発生の時期が過ぎれば、あの不気味な蚊柱も嘘のように消え去り、再び穏やかな川辺の景色が戻ってきます。今では、これも季節の風物詩の一つだと割り切れるようになりましたが、あの最初の春のパニックは一生忘れることはないでしょう。自然豊かな場所に住むということは、こうした予測不可能な命の爆発とも隣り合わせであるということを、ユスリカたちが身を持って教えてくれたのです。
窓を埋め尽くすユスリカ大量発生に悩まされた我が家の記録